10月の給料日、明細を見て「あれ、手取りが少し減っている?」と思った方はいませんか。
正直に言うと、私はこれまで給与明細の「差引支給額」しか見ていませんでした。でも食品の値上げ(前々回)、電気・ガス代(前回)と調べてきて、今回は「入ってくるお金」の側も見てみることにしました。
結論から言うと、10月に手取りが変わるのは毎年決まった仕組みです。そのしくみを、できるだけやさしくまとめます。
結論:10月の給料から、新しい保険料が引かれる
会社員の健康保険料と厚生年金保険料は、毎月の給料そのものではなく、「標準報酬月額」という基準の金額をもとに計算されています。
この基準額は年に1回、見直されます。そして、見直した新しい保険料が引かれ始めるのが、多くの会社で10月の給料なのです。
決め手は「4月・5月・6月」の給料
流れはこうなっています。
- 4〜6月 ― この3か月の給料の平均を計算する
- 7月 ― 会社が日本年金機構に届け出る(算定基礎届)
- 9月 ― 新しい基準額が決まり、9月分の保険料から適用
- 10月 ― 9月分の保険料が、10月の給料から引かれる
この見直しは「定時決定」と呼ばれています。決まった基準額は、翌年8月まで1年間使われます。
ポイントは、ここでいう給料に残業代や通勤手当も含まれることです。つまり、春に残業が多かった人ほど、秋から1年間の保険料が上がりやすいのです。
春に頑張った残業のぶんが、半年たって保険料として返ってくる。なんだか少し損をした気分になりますね。
いくら変わるのか ― 計算してみました
協会けんぽ東京支部の料率(2026年度)で計算してみます。本人が負担するのは、それぞれの半分です。
- 健康保険 ― 9.85%(本人は4.925%)
- 厚生年金 ― 18.3%(本人は9.15%)
- 子ども・子育て支援金 ― 0.23%(本人は0.115%)
- 介護保険(40〜64歳のみ)― 1.62%(本人は0.81%)
たとえば、基準額が30万円から32万円に1段階上がった場合、本人の負担はこう増えます。
- 39歳以下 ― 月およそ2,840円(年に約3万4千円)
- 40〜64歳 ― 月およそ3,000円(年に約3万6千円)
1段階上がるだけで、年に3万円以上。決して小さくない金額です。
今年は「新しい項目」も増えていた
2026年は、もうひとつ変化がありました。「子ども・子育て支援金」の徴収が始まったのです。
4月分の保険料から加わり、多くの会社では5月の給料から天引きされています。健康保険料と一緒に引かれるため、明細では気づきにくいかもしれません。
一方で、協会けんぽの健康保険料率は全国平均で10.0%から9.9%に少し下がりました。上がるものと下がるものが入り混じっているので、明細を見比べないと分からないのが実際のところです。
パートの方は「106万円の壁」がなくなりました
10月はパートで働く方にも大きな変化がありました。
これまで社会保険に入る条件のひとつだった「月8万8千円以上(年収約106万円)」という賃金の要件が、2026年10月に撤廃されました(厚生労働省)。
今後は、従業員51人以上の会社で週20時間以上働くなどの条件を満たせば、収入にかかわらず加入の対象になります。2027年10月からは、36〜50人の会社にも広がる予定です。
なお、配偶者の扶養から外れる「130万円の壁」は別の話で、こちらは残っています。
悪いことばかりではない
保険料が上がると、つい「取られた」と感じてしまいます。でも、厚生年金は払った保険料が多いほど、将来の年金額も増える仕組みです。病気やけがで休んだときの手当金も、基準額をもとに計算されます。
老後の自分への仕送りだと思えば、まあ仕方ないかと自分に言い聞かせています。
今日からできる3つのこと
1. 9月と10月の給与明細を並べて見る
「健康保険」「厚生年金」の欄の金額が変わっていないか確かめましょう。変わっていれば、それが定時決定の結果です。
2. 来年の4〜6月を意識しておく
残業を無理に減らす必要はありませんが、「この3か月が1年分の保険料を決める」と知っておくだけで、秋に驚かずに済みます。
3. パートの方は、勤め先に確認する
週20時間以上働いている方は、10月から加入の対象になっていないか、勤め先に一度確認しておくと安心です。
まとめ
- 社会保険料は4〜6月の給料をもとに、年に1回見直される
- 新しい保険料は、多くの会社で10月の給料から引かれ始める
- 基準額が1段階上がると、年に3万円以上負担が増えることも
- 2026年は子ども・子育て支援金の徴収が始まり、パートの106万円の壁も撤廃
値上げ、光熱費、そして手取り。3回続けて調べてみて、「知らないうちに変わっていること」が本当に多いと実感しました。次回も、暮らしのお金に関わる話を調べてみます。
出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」、全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度保険料率のお知らせ」、厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」。保険料率は協会けんぽ東京支部の例です。加入している健康保険組合によって料率は異なります。



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