「防衛増税」「所得税が1%アップ」。来年1月から始まる新しい税について、そんな見出しを見かけるようになりました。私も「また手取りが減るのか」と身構えたのですが、国税庁の資料を読み、今年と来年の税額表を並べて比べてみると、印象はだいぶ違いました。
結論:この税で手取りが減るわけではない。天引きは月数百円減る
- 防衛特別所得税 ― 2027年1月から。所得税額の1%(年収の1%ではない)
- 復興特別所得税 ― 2.1%から1.1%に下がる。合計は2.1%のまま
- 毎月の天引き ― 新しい税額表で月170〜680円ほど減る(扶養なしの例)
- ただし ― 復興特別所得税は10年延長。上乗せが続く期間は長くなる
防衛特別所得税のしくみ
新しい税は、年収にかかるのではなく、計算された所得税の額に上乗せされます。たとえば所得税額が10万円の人なら、こうなります。
- 今年まで ― 復興特別所得税 2,100円
- 来年から ― 防衛特別所得税 1,000円+復興特別所得税 1,100円=2,100円
名前が2つに分かれただけで、合計は同じです。国税庁の税額表の金額には、この2つの税があらかじめ含まれています。
では、何が負担増なのか
違いは「いつまで続くか」です。
- 復興特別所得税 ― 2037年末までの予定が、2047年末までに
- 防衛特別所得税 ― 2027年1月から当面の間
もとの予定なら、2038年からは上乗せがなくなるはずでした。これからは2038年以降も合計2.1%が続き、2048年以降も1%が残ります。今の手取りは変わらないものの、終わるはずだった上乗せが先へ延びるというのが、実際のところのようです。「増税ではない」とも「負担がない」とも言い切れない、なんとも説明の難しい話だと感じました。
天引きはいくら減る? 税額表を比べてみた
来年1月からは、新しい「令和9年分 源泉徴収税額表」が使われます。国税庁の表(月額表の甲欄・扶養0人)で、今年と来年を比べました。金額は社会保険料などを引いた後の月給です。
- 15万円 ― 2,420円 → 2,080円(340円減)
- 20万円 ― 4,340円 → 4,170円(170円減)
- 30万円 ― 7,930円 → 7,760円(170円減)
- 40万円 ― 15,650円 → 15,320円(330円減)
- 50万円 ― 28,190円 → 27,520円(670円減)
- 60万円 ― 45,390円 → 44,720円(670円減)
扶養が1人いる場合も、減る額はほぼ同じでした。「手取りが月に数千円増える」と書かれた解説も見かけましたが、表を比べる限り、毎月の天引きが減るのは数百円です。年に直すと、月給30万円で約2,000円、50万円で約8,000円ほどです。
なぜ数百円だけ? 104万円はどこへ
年末調整の記事で、基礎控除が最大104万円に上がったと書きました。それなら毎月の天引きはもっと減りそうなものです。
国税庁の計算式を見ると、来年の税額表で月ごとに差し引く基礎控除は5万1,667円。年に直すと62万円で、もとになる基礎控除が58万円から4万円増えた分だけが入っています。実際、4万円に税率5%を掛けて12か月で割ると、さきほどの170円とほぼぴったり合います(税率10%なら340円、20%なら680円)。
つまり、104万円との差にあたる42万円は毎月の表に入っていません。この上乗せの分は、来年も12月の年末調整で戻ってくる計算になります。
なお、この上乗せがあるのは2026年分と2027年分です。今の法律では、2028年分からは基礎控除が62万円(所得の低い人は99万円)になります。その後は2年ごとに、物価を見て見直すことになっています。
年金を受け取っている人は
- 今年12月の年金 ― 1年分の税額を計算し直して精算。戻る分は原則として年金の支払者から還付
- 来年1月以降 ― 税金を計算するときの控除が増える
- 来年2月の年金から ― 防衛特別所得税が併せて引かれる(合計の上乗せはこちらも2.1%)
今日からできる3つのこと
1. 来年1月に、11月の明細と比べてみる
12月の明細は年末調整が入るので、比べるなら11月分が分かりやすいです。残業代などで変わるため、「所得税」の欄を基本給が同じ月どうしで見てみましょう。
2. 年末調整の書類を忘れずに出す
今年も来年も、減税の大きな部分は年末調整で戻ります。書類の書き方も確認を。ほかの期限は締め切りカレンダーにまとめています。
3. 「1%増税」の見出しは中身を確かめる
年収の1%と所得税額の1%では、金額がまったく違います。
まとめ
- 防衛特別所得税は所得税額の1%。2027年1月から
- 復興特別所得税が下がるので、合計は2.1%のまま
- その代わり、上乗せが続く期間は長くなる
- 毎月の天引きは月170〜680円ほど減る(扶養0人の例)
- 基礎控除104万円の残りは、来年も年末調整で戻る
「増税」と聞いて身構えましたが、調べてみると、すぐに手取りが減る話ではありませんでした。一方で、ずっと先まで続く話でもあります。見出しだけで判断せず、数字を確かめる大切さを改めて感じました。
次回も、暮らしのお金に関わる話を調べてみます。
出典:国税庁「令和9年分 源泉徴収税額表」「令和8年分 源泉徴収税額表」「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」、日本年金機構「防衛特別所得税・復興特別所得税について」。税額の差や年額は、これらの表をもとに当ブログで計算した目安です。実際の税額は、扶養の人数や社会保険料などによって変わります。
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