11月に入ると、パートやアルバイトで働く方が「年末はシフトを減らそうか」と考え始める時期です。でも今年は、その判断のもとになる「年収の壁」が大きく変わりました。社会保険の記事と年末調整の記事で別々に触れてきたので、今回はひとつにまとめてみました。
結論:シフトを減らす前に、まず「契約」を確認
- 106万円の壁 ― 10月に撤廃。今は「週20時間以上」などで判定
- 130万円の壁 ― 残っている。ただし4月から労働契約の内容で判定。予測しにくい残業代は含めない
- 税金の壁 ― 136万円、178万円などに上がった
- 注意 ― シフト制の人などは、新しいルールを使えない場合がある
2026年の「年収の壁」一覧
壁には「社会保険の壁」と「税金の壁」の2種類があり、影響の大きさがまったく違います。
社会保険の壁(超えると保険料の負担が生まれる)
- 週20時間(もとの106万円の壁) ― 従業員51人以上の会社で週20時間以上働くと、収入にかかわらず加入の対象(学生は除く)。2027年10月からは36人以上の会社に広がる
- 130万円 ― 家族の扶養から外れる。19〜22歳は150万円、60歳以上は180万円
税金の壁(本人や配偶者なら、超えても手取りが急に減るわけではない)
- 119万円 ― 本人の住民税がかかり始める目安(110万円から上がる。市区町村で差あり)
- 136万円 ― 家族が配偶者控除・扶養控除を受けられる上限(123万円から上がる)
- 169万円 ― 配偶者特別控除が満額の上限。その先は207万円まで少しずつ減る
- 178万円 ― 本人の所得税がかかり始める(160万円から上がる)
いちばん大きな変化:130万円は「契約」で判定に
これまでは、直近の給料などから今後1年の収入を見込んで判定していました。そのため、繁忙期に残業が増えると「扶養から外れるかも」と心配になりやすかったのです。
2026年4月からは、次のように変わりました。
- 判定のもと ― 労働条件通知書などに書かれた時給・労働時間・日数
- 含めないもの ― 契約に定めがなく、予測しにくい残業代
- 含めるもの ― 契約で決まっている手当や賞与
- 結果的に超えたら ― 見込んでいなかった臨時収入で、社会通念上妥当な範囲なら、取り消す必要はない
「妥当な範囲」の金額は示されていません。金額を決めると、それが新しい壁になりかねないためです。一方で、契約書の賃金を不当に低く書いていた場合は認められません。
ただし、全員に当てはまるわけではない
私学共済が公開しているQ&Aでは、次のような場合は労働条件通知書では確認できず、従来どおり勤め先の証明書が必要とされています。
- シフト制で、通知書の労働時間がはっきりしない
- 契約期間が1年未満
- 年金や自営業など、給料以外の収入がある
パートでは珍しくない働き方ばかりです。「新しいルールで安心」と思っていたら自分は対象外だった、ということもありそうで、ここは調べてみて一番気になった点でした。
こうした方でも、人手不足で一時的に収入が増えただけなら、勤め先に「一時的な収入増」と証明してもらうことで扶養にとどまれる仕組みがあります(原則として連続2回まで)。ただし、時給が上がったなど、今後も収入が増え続ける場合は対象外です。
超えると、いくら負担が増える?
年収130万円(月約10.8万円)で計算してみました(協会けんぽ東京支部の2026年度の料率)。
- 勤め先の社会保険に入る場合 ― 月 約1万5,600円(39歳以下)、約1万6,500円(40〜64歳)。年に約19万〜20万円
- 国民年金と国民健康保険に入る場合 ― 国民年金だけで年21万5,040円。これに市区町村ごとの国民健康保険料が加わる
勤め先の社会保険に入る場合は、年収150万円くらいまで増やせば、手取りがほぼ元に戻る計算です。
損ばかりではありません。厚生年金に1年入ると、将来の年金が年に約7,200円増え、その分は一生続きます。病気で休んだときの傷病手当金も受けられるようになります。
※当ブログの試算です。賞与なし・配偶者の扶養に入っている人と比べた目安で、実際の金額は年齢や地域、健康保険組合によって変わります。
今日からできる3つのこと
1. 労働条件通知書を探して計算する
「時給×週の時間×52週」が年収の見込みです。たとえば全国平均の最低賃金1,177円で週20時間なら、約122万円。最低賃金は今年も上がっているので、同じ時間でも年収は増えています。
2. 週20時間と会社の人数を確かめる
週20時間以上で51人以上の会社なら、130万円より先に加入の対象になります。すでに対象になっていないか、勤め先に聞いておくと安心です。
3. 家族手当の基準も見ておく
配偶者の勤め先の家族手当には、独自の収入の基準がある場合があります。国の壁とは別の話なので、就業規則などで確認を。
まとめ
- 106万円の壁は10月に撤廃。今は週20時間以上などで判定
- 130万円の壁は労働契約の内容で判定。予測しにくい残業代は含めない
- ただしシフト制・契約1年未満・給料以外の収入ありは従来どおりの確認
- 税金の壁は119万円、136万円、178万円などに上がった
- 超えると年約19万〜20万円の負担。ただし将来の年金も増える
「壁」と聞くと身構えてしまいますが、今年は少しずつ、働きたい人が働きやすい方向へ動いていると感じました。年末に慌てて休む前に、まずは通知書を1枚探してみるのがよさそうです。年末調整の書類を書くときにも、家族の年収の見込みは必要になります。
次回も、暮らしのお金に関わる話を調べてみます。
出典:厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日)「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」「社会保険適用拡大」関連資料、私学共済「被扶養者の認定における年間収入の取扱いにかかるQ&A」、日本年金機構「短時間労働者に係る賃金要件の撤廃」、協会けんぽ「令和8年度保険料率」、渋谷区「令和9年度住民税の税制改正」、TKC「令和8年度改正所得税法特集号」。この記事は一般的な情報の紹介です。扶養の判定は健康保険組合などによって確認方法が異なることがあるので、勤め先や加入先に確認してください。
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